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2009年10月27日

上絵付けタイル

以前のブログで、タイル浪漫館をご紹介しましたが、以来古い時代のタイルが意識的に気になります。
スピードと、生産量の多い現代では、あまり見られない手の込んだ作業工程があるからです。
伝統の中には、somethingがあって、新しい未来へのヒントを教えてくれます。

タイルは、壁面を覆う建材なので、当然の事ながら大量生産です。
成形→釉掛け→焼成と機械化された製造ラインで生産されていますが、ラインの過程の所々に人の手作業を加え、特注の製品を生産することはあります。
加納製陶の場合、これが補修タイルのご注文に応えられる技術になっています。

昭和の時代、焼成した後でさらに上絵付けをして、もう一度焼くタイルがありました。
上絵は器で一般的に見られる技法ですが、タイルでは今は珍しいものになっています。

今では使われなくなった作業場が、そのまま残っていました。
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作業台の座布団が時代を感じます。

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色見本のタイル
その前には、色見本のタイルが並んで、職人さんやパートさんが絵筆を握っていた当時の作業風景が蘇りませんか?
作っていたのは輸出用タイルならでは。色やデザインが具象的でカラフルです。

洋風化された現代の住まいにそのまま映えるのではないでしょうか?

手の込んだ良い物は時代を経てもいいものです!

子会社、クリエイティブLABOは、ビンテージタイルを販売しています。

クリエイティブLABO・ネットショップ「プロシューマ」

2009年09月25日

CTタイルの現場

話題のエコ、「CO2削減」ですが、セラミックタイルの分野においても、「温暖化防止」や「省エネ・省資源」、セルフクリーニングや抗菌・防汚などの「メンテナンスフリー」などをテーマにした『高機能タイル』の開発が進んでいます。
進化する「やきもの」です。
このような高機能タイルのうち、『美濃焼CTタイル』を実際に使用されている施設をいくつか訪問する機会がありました。
浜松工業技術センター、理化学研究所などさまざまな実験機関において、汚れ落ちや周りの空気中の環境浄化においての効果は高い数値をあげています。
が、やはり、実際のところ利用されている皆さんの感想は一番気になるところです。
CTタイルは、汚れや有害物質のもつ(+)、(-)の電子レベルでの化学反応を促進させる「電荷触媒」を、釉薬の中に混入したタイルです。
笠原町の1自治体(現在は多治見市に合併)と触媒研究の第一人者・市村昭二博士、美濃焼タイル業界の官民一丸となって開発し、2004年に特許登録。
地場産業推奨品として、公共施設で多く使われ、大都市ではマンションなどで施工されています。
今回訪問したのも施工経年数6~7年の学校などの公共施設でした。
実感として、一番わかりやすいのは目に見える汚れがどうなっているか?です。
率直に言って、どの建物でも思ってた以上に、施工当時のままに美しいタイルでした。
掃除は全くしていないが綺麗なままという感想をあちこちで聞きました。
経年でマット調の表面のタイルの四方にはモヤモヤと薄汚れた水アカが見られることがありますが、それもありません。
中でも、多治見市の三の倉リサイクルプラザは汚れの目立ちやすい真っ白なタイルを使っているにもかかわらず、実に綺麗な外壁でした。

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綺麗な白い外壁の多治見市三の倉リサイクルプラザ

「野鳥の糞による汚れが、何も掃除しなくてもなくなったんですよ」とのこと。

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45角特殊面状のCTタイルを使った岐阜盲学校

岐阜盲学校は岐阜市の中心市街地の16,674㎡に建つ、地上4階建ての大きな学校です。
これだけ、大きいとメンテナンスは大変ですが、校舎は綺麗でした。
CTタイルは建っている建物の周りの空気中の有害物質を浄化する働きもあるので、交通量の多い市街地にはピッタリかもしれません。(Muto)


2009年07月17日

モザイクタイル作家・山崎暢子さん

きっかけは、タイルモザイク浪漫館で見た、小さなタイルクッションでした。
山崎暢子さん(1967年生まれ、京都精華大卒)は笠原産のモザイクタイルを布に貼って造形する作家さんです。
作品を見たときの目から鱗的衝撃で、先日京都まで押し掛けてしまいました。
彫刻家、陶芸家として、関西地方を中心に個展で発表しておられます。
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写真は個展での展示

昨年の暮れから今年春まで、岐阜県現代陶芸美術館(多治見市東町4)での『タイル きのう・きょう・あした』展が開かれ、そこに、山崎さんの大作が展示されていました。
大がかりなカーテンに、滝上りのように、鯉が上っていたり、ワイシャツ、ワンピース、ソファーになったものなど、全面にタイルが貼ってある作品です。
そこからのご縁で、モザイク浪漫館に、クッションが残っており、私どもが巡り逢ったようです。
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写真は山崎さんのパンフから一部抜粋しました

タイルといえば、硬いものに貼る概念しかありませんでした。
「布にタイルを貼る」コペルニクス的転回の発想は、タイルメーカーにない、まさに「びっくり」な作風です。
ところがその作品はタイルを貼っても尚、布のもつ柔らかさやしなやかさを全く失っていません。
そればかりか、布という変貌自在な形態の特質を取り込んで、タイルの表現を広げています。
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タイルのクールでツルっとした感覚が昔から好きで、タイルを素材としているとのこと。
気に入る布の色合いが出るまで染色したり、柔らかさをそこなわない接着剤との試行錯誤など、制作にかける拘りは細部にわたります。
しばし、タイル談義に話が弾みました。
今後、山崎さんとコラボ出来ればと考えています。(Muto)
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京都の趣のある古い日本家屋のアトリエでの山崎さん
山崎暢子さんの経歴

2009年06月16日

タイルの変遷ーモザイク浪漫館

時代による住環境の変化から、マンションやビル、洋風スタイルの外壁など、今タイルといえば45二丁サイズ(45㎜×95㎜)が主流です。 しかし、かつてはサイズ、技法ともバラエティーに富んでいました。
タイルのデザイン的変遷が見られる地元笠原町のモザイク浪漫館は、興味深いです。
IMG_9411a.jpg 旧笠原中学校の古い建物を利用した施設で、あまりにも小さくおんぼろなので穴場的、意外に知られていません。
前はテニスコートとグランドになっています。 記憶では美術室だったような?窓の造りに校舎だった頃の面影が残ります。

しかし、外観に反して、やきもの好きな方には堪らない内容で、遠くからの見学者は絶えません。地元の有志が地区の企業からや、全国から建物を解体する際に収集した美濃焼産タイルの逸品です。 なにせ、全国のタイルの80~90%の生産高が笠原町ですから、デザイン的変遷は日本の建築史、デザイン史をも物語っています。
やはり、ここはメーカーとしては取り上げずにはいられません。なにより、かつてこの地でこんなタイルが焼かれていたかと思うと、ワクワクします。

歴史的に見ると、陶板を敷いた敷瓦が寺院建築様式として中国から日本に伝わったのが日本のタイルの始まりです。その後、敷瓦は茶道文化として普及。幕末から明治にかけては、美濃や尾張で施釉した陶板の「本業敷瓦」の生産が流行します。
浪漫館には古くは江戸末期の本業焼タイルから明治、大正、昭和のものが展示されています。
昭和30年代から50年代は、一般家庭への普及と生産技術の向上により、笠原町での生産が飛躍的に発展した時代でした。そのため、収蔵品はこの時代のものが中心になっています。どれも先人の工夫の結集で技術的に丁寧で真摯な手作り作業に驚くばかりです。
IMG_9222a.jpg 写真は笠原の銭湯「折戸湯」に貼られていたタイルです。
明治20年代になって新しく導入された銅版転写の技術を使った大量生産と思われます。呉須のコバルトブルーと鉄の茶色の発色が鮮やかです。

モザイクタイルの生産は明治時代に始まり、大正時代に製造が本格化します。 イギリスから輸入されていたヴィクトリアンタイルのようなレリーフやマジョリカタイルのようなデザインが製品に取り入れられ、大きさも輸入にあわせ、150㎜角が中心になります。
当時のタイルを、昭和45年、57年に復刻した150㎜角の手描きタイルとマジョリカ風タイルが次の3枚の写真です。
IMG_9201a.jpgヴィクトリアン・タイルの特徴である輪郭線を盛上げるアールヌーボーの加飾手法が用いられています。
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また、30年代は食器の技術を生かした手描きの素晴らしいタイルが誕生しました。 IMG_9212b.jpg IMG_9213a.jpg
このころ、笠原町のモザイクタイルの元祖山内逸三氏はマジョリカ風の作品やテラコッタ風の作品をいくつか手がけています。
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深いレリーフに色分けした釉薬が施されています。土の窯変によるやきものらしい味わいです。
テラコッタは大正から昭和10年代の銀行や官庁の建物の軒先、外壁の装飾で流行したアールデコ調の装飾ですが、これをヒントとしたのでしょうか。

他にも同時代のレリーフの製品は収蔵されています。 IMG_9197a.jpg
また、こんな彫刻的なウサギや
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IMG00011-20090526-1023a1a.jpg絵画的な製品もありました。
昭和30年代後半から40年代の小さなモザイクタイルは、壁だけに限らず、風呂、流し、たばこやのショーケース、かまどなどあらゆる所に使われました。幾何学的な形の組み合わせはモダンでした。 IMG_9215a.jpg
こんなポップでかわいらしいモザイクタイル、現代にも受けそうです。 IMG_9220a.jpg
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お風呂の小さなモザイクのグラデーションは当時の流行でした。

昭和56年につくられたギヤマンタイルです。
IMG_9206a.jpg 1個の大きさは15㎝角。フッリットガラス系の釉薬を窪みに流し込んでいます。
この頃のタイルは、当時を知らない若い人にとっては、今流行のミッドセンチュリー的なインテリアにマッチする新感覚なのではないでしょうか。
オランダのデフォルト釉のように美しい乳白釉は日本タイルの製品 IMG_9237a.jpg
他にもオブジェかと思うような大胆な作風、製品が置かれています。 IMG_9233a.jpg
40~50年代には隣に貼るタイルとの組み合わせによる連続模様が流行しました。 IMG_9412a.jpg IMG_9415c.jpg IMG_9416a.jpg IMG_9414a-1.jpg
タイル屋さんは、製品を台紙に貼ったサンプルカタログ台紙を持って全国へ営業に出かけます。(昔は旅に出るといっていました)地元メーカーの製品の歴史がいっぱいに詰まったサンプルの部屋です。 IMG_9235a.jpg
現在道の駅の形態をした日本タイル村構想があります。かつてのタイルは技術的に貴重な資料ですから、モザイク浪漫館の収蔵品もさらに日の目を見ることを期待します。(Muto)
モザイク浪漫館への入館お問い合わせは
多治見市笠原町商工会         (0572-43-3241)
多治見市笠原町陶磁器工業協同組合(0572-43-2141)
美濃焼振興協議会            (0572-43-6024)

2009年05月21日

鋳込み成形

やきものの成形のひとつに、鋳込みがあります。
石膏型の吸水性を利用して、土をドロ状にした泥しょうを、型に流し込んで形作る技法です。
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原型を2つ割った石膏型です。
複雑な造形になってくると、割型のパーツも増えます。

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流し込む泥しょうには、珪酸ナトリウムや、炭酸ナトリウムなど解こう剤を入れ、少ない水分で、とろみのある流しやすい泥しょうをつくります。

型いっぱいに流し込んだ泥しょうが適度な厚さになったとき、型から排出。
一定時間おいて型からはずすことで、厚みの均一な一定なものを大量に作ることができます。
薄手のもの、多角形な形、彫塑的な複雑な成形にむいています。
日常的に使われる食器、置物などに、この技法で作られたものが多く見られます。

タイルの成形のほとんどが、顆粒状原料を加圧プレスで作る乾式プレス成形なのは、焼成後の寸法や形の歪みなど、焼成リスク少なくするためですが。
とはいっても、近年は建築家の自由な発想で、タイルにも様々な面状や形が要求されます。
そこで、タイルにおいても、デザイン的な形状は鋳込みで成形する場合があります。
タイルは、建造物に集積して貼り合わせたときに、わずか0.X㎜単位の寸法や形状の差が、最終的に大きなズレになりかねません。
従って、焼成による歪みや反りなどをあらかじめ計算に入れた精密な型を作る必要があります。

分業化されている美濃、瀬戸では原型師、型屋さん、鋳込み屋さんがいて、専業の職人技が、ものつくりを支えています。
(ちなみに、メーカーを昔は「窯焼き」と呼んだのは、焼成の専門だった名残でしょう。)

また、鋳込みには、流し込む方法で、圧力鋳込みとガバ鋳込みがあります。
ガバ鋳込みは、泥しょうを入れて「ガバっと排泥」するのが語源です。
圧力鋳込みは、空気圧力で泥しょうを型に送り込み注入する方法で、さらに均一な厚みで大量に生産できる仕組みです。

このような大量生産のための鋳込みの伝統的な技術ですが、1品だけのオブジェ製作に鋳込みの技術を使って創作の可能性を広げている陶芸家に、京都の深見陶治さん、瀬戸の長井重和さん、土岐出身の林茂樹さんがいます。

鋳込みは造形的にも、可能性の広がる技術です。(Muto)


2009年04月08日

窯の話―vol.3 窯の種類と焼きの違い

三度、窯の話です。今回は種類から見る焼成の話です。

ガス窯、トンネル窯、電気窯・・・、窯の違いは製品にどんな影響があるのでしょうか?

美濃のタイル工場の窯は、ほとんどがブタンガス燃料のトンネル窯です。 IMG_7873-a.jpg

   60㍍もある長いトンネル窯(加納製陶工場)

 大量生産での焼成の均一化、燃料の効率化において、現在で最も近代的な窯です。

窯は時代とともに燃料、形状を変え、近代化の変遷が製品技術を発達させてきました。

窯の歴史は、雑木と一緒に焼いた土偶に始まり、世界で最も古い窯は、紀元前6世紀頃のエジプトの円筒状ストーブ形といわれています。

その後、地中に穴を掘って築く窖(あな)窯時代に入るのですが、地下の水分によって温度が上がらないことから、地上に穴を築くようになります。さらに、高温焼成しようと、燃焼室と焼成室を区別し、燃焼効率を上げるため通風をよくしようと、傾斜面に窯を築く、煙突をつけるなど、形を変え燃料を変えてきたのです。

窯の種類は燃料から見れば、薪窯、ガス窯(LPガス、ブタン)、 灯油窯、 重油窯、電気窯に分類され、形状からすれば、窖(あな)窯 、大窯、連房式登り窯、倒炎式角窯、蛇窯、 トンネル窯などになります。また他にも、上絵用に錦窯、楽焼きの楽窯などがあります。

最も、最新式の窯は、マイクロ波によるもので、電子レンジと同じ仕組みです。 こちらはまだ容量が小さく大型化には開発がまたれます。

近代化は、新しいものに変わっていくなかで、古いやり方が淘汰されていくものですが、しかし、やきものにおいては、大昔に誕生した形状や燃料も、場合によっては今も使われています。

作りたい製品、表現したい作品によって相応しい「焼成の雰囲気」を求めるためです。

例えば、効率が良いからといって、ガスではなかなか、薪の灰かぶりそのものはだせません。また、彩色が鮮やかな低火度のスペイン陶器などは、円錐状の全体が煙突みたいな形状で、高温域での温度上昇効率を求めていません。

焼きにはそれぞれのこだわりがあるわけです。

1250℃の高温帯までいけば、それで終了というものでもありません。

素地の水分が蒸発する「あぶり」の段階。温度による化学反応で、粘土鉱物が新しい鉱物に生成、溶融して、固く焼結していく「攻め」「練らし」の段階。1100℃からは釉薬の変化もはじまります。時間ごとに緩やかに曲線を描いて温度をあげ、微妙な操作で焼成雰囲気を作り出しています。

冷却の方法と時間でも、色も強度もずいぶん変わります。まるで、おばあちゃんの煮物と一緒で、冷めていくときがおいしい秘訣?なので、すぐに窯の蓋を開けるわけにはいきません。

 このように、昇温速度(かける時間)と温度帯、条件、冷却温度と方法が表現に多彩な変化を生むので、焼きにあった窯を選択することになります。

多種の窯を持てればいうことないですが、そんなわけにもいきません。

では、大量生産において、効率と品質をあげるのに良いトンネル窯と電気窯の特質を特に取り上げてみます。

 20世紀初頭に完成したトンネル窯は、なかでも、製品の均一化と燃料の効率化の優れたものです。長いトンネルの中を製品が台車に乗って流れていくことで、あぶり、攻め、練らし、冷却と焼成されるのですが、窯入口から予熱帯、焼成帯、冷却帯で構成されています。

炎は焼成帯にあたるトンネル窯の中央のバーナーのみです。 IMG_8722a.jpg

 出口から入り口方向に空気を送りだして得た排熱を、予熱帯焼成温度に利用しています。

また焼成帯のバーナー付近に炎に空気を送る弁やダンパー、ドラフト等によって窯内の焼成圧力の雰囲気を変えたり微調整ができます。 

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職人さんの腕の見せ所のバーナーワーク

一度で大量、均一な焼き上がりが可能ですし、微調整による炎の焼きは、やはり焼きものらしいあがりです。

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トンネル窯の出口部分から中央の炎が遠くに見える

一方電気は、炎ではなく窯内に張り巡らした電熱線で温度をあげています。温度曲線はコンピューターによる、電気制御が可能です。電熱のため、焼成が安定します。が、それも窯の容量によるので、トンネル窯ほどの大量生産は望めません。

特質としては、ガスは炎をくぐった焼きの味わいがあるし、電気はさらっとした焼きの特長があります。 工場にはトンネル窯の他に、電気窯があります。 IMG_8715a.jpg

電気窯の容量としては、均一的に焼きが仕上がるには最適な大きさのMAXといわれる1.3立方メートルの窯です。大容量のトンネル窯より小回りがきくため、小ロットの製品を早くつくるのに有用です。一度に200才、17.5平方㍍分のタイルまで焼成できます。

焼成の均一化は、同じときに同じ窯で一度に焼くのがベストなので、これ以上の量の焼成は窯を分けて電気窯で焼成するより、トンネル窯にまわした方が製品が安定します。

製品にあわせて、窯は選択できる体制は理想的で、これにより小回りが効くうえに、高品質な、どんな注文にも対応できるようになります。        (Muto)

2009年03月12日

土の話 その2

一般的に採掘した土は、不純物をとり除いて、水簸し精製して練ります。

では、タイル工場など量産向けの土はどのような工程で、タイル工場に来るのでしょうか?

タイル用原料をつくる地元の丸美陶料さんを見学させて頂きました。

一区画400㌧の原料土が入るストックヤードがずらりと並んでいます。白土、赤土などおよそ100種類ほどの原土があります。

ほとんどがこの地方のものですが、新しい優良な資源を求めて、遠くは信楽と東京都新島産もあります。ちょうど、ストックヤードにトラックから原料が降ろされていました。 IMG_8438a.jpg

降ろされていたのは、工場から出た陶器屑を回収し粉砕したリサイクル原料でした。窯業資源にする原土は日本全国であと50年分ほどと言われており、資源の枯渇の改善にこのようなリサイクル原料も原土と同じように並んでいます。 IMG_8450a.jpg       

    9㌧の原料が入るボールミル

原土やリサイクル原料は、数種類を混ぜ合わせて調合し、セラミックボール、玉石と一緒にボールミルに投入、およそ18時間回されます。 IMG_8452a.jpg

 

ちなみに玉石はフランスの天然石でした。

釉薬調合の場合はセラミックボールだけですが、原土には大きな玉石が相応しいようです。

 

これだけでずいぶん滑らかな粒子ですが、さらにスラリータンクに移されドロドロの泥しょう状まで攪拌されます。

 

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タンクは2階建ての屋根から覗くような深さ。上から見下ろすと足がすくむ思いです。

泥しょう状になった原料は、乾燥をかけて顆粒状になります。

乾燥はスプレードライヤーと呼ばれる高さ25㍍ほどの塔の中です。タイルの街の象徴的な建物です。宮崎駿の「ハウルの動く城」を連想しませんか? IMG_8462a.jpg     

  この中で泥しょうは噴出され、400~500℃の熱風を吹き付けて乾燥。舞い降りてくる間に顆粒状になります。

顆粒にするには、これくらいの高さが必要なんだとか。

ところで、なぜ粉末ではなく顆粒状なんでしょう?プレスによる乾式成形は湿式より歪みや縮みが少ないと以前のブログでも載せましたが、微粒体のままだと粒子どうしの摩擦に影響されて成形に欠陥がでるからです。 IMG_8458a.jpg

 乾燥してできあがったタイル原料の出口

このようにしてできあがった顆粒状の原料がタイル工場に運ばれてくるのです。

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     加納製陶工場内原料タンク

取材にご協力を戴いた丸美陶料さんのHRはこちら

                     (Muto)

2009年03月04日

土の話 その1

今日は土の話です。

長い年月をかけて、岩や石が風化し、動植物などの腐敗した養分も併せて堆積して土になります。

土があれば、やきものは全国各地どこにでもあります。美濃から西へ車を走らせてみるだけで、信楽、備前、萩へと、土を採掘した山の地肌が車窓から見られます。

地球上のどこにでもある成分は鉄分で、ほとんどが赤茶色の土の地肌を覗かせていますが、瀬戸、美濃そして有田は、白い山肌が見られます。

美濃山間の鉱山で、採掘あとに雨水が貯まった景色はなんともいえない美しさです。白い土肌にエメラルドグリーンが反射して、宝石のような深い深い美しいグリーンです。

やきものに使う土は、性質から3種類に分かれます。可塑性原料、非可塑性原料、溶媒原料で、これを適量に配合して作ります。

可塑性原料は、形をつくるのに必要な粘性や可塑性がある粘土やカオリンです。乾くと固まり、高温で焼結します。

非可塑性原料は素地の乾燥を早め、収縮を少なくして、ひずみやキレツを防ぐ働きがあります。石英や人工的に焼いた陶器屑を粉にしたシャモット、セルベンがこれにあたります。

また媒溶材原料は、焼成温度を低くする働きがあり、これが溶けて粘土分にとけ込んでゆくことで吸水性の低下、透過性の増加に役立つ。長石、石灰石などです。

 ちなみに、皆さんの家の裏の例えば、田んぼの土でやきものが出来るでしょうか?できないことはないのです。趣味で陶芸をされてる方は、田んぼの土に陶芸材料店で可塑性原料の木節粘土を買ってきて、適当に混ぜて実験してみてください。

余談ですが、田んぼの土には男土=おんど、女土=めんど、があるそうです。粒子が粗く、練りを加えると堅くなるのが、男土。粒子が細かく練ると軟らかくなるのが女土です。できるだけ、深く掘ったところの土で試してみてください。

美濃、瀬戸で産出する土は、可塑性原料の蛙目粘土、木節粘土と溶媒材原料の長石があります。

長石といえば、志野釉の原料です。志野は長石単身の釉薬で生まれました。

長石は同じ東濃地区の瑞浪市釜戸で産出する「釜戸長石」が良質で有名ですが、本来の産地であった釜戸鉱山は既に廃山して産出はありません。資源の枯渇は残念です。今は成分を調整してつくっています。珪酸分の多いのが特長で、黄瀬戸釉などにも向いています。

このほか、花崗岩の半風化物で砂状の砂婆(サバ)も美濃では採れます。

砂婆・・・ゲゲゲの鬼太郎の砂掛け婆みたいな名前ですが、すぐれもので、主に素地用原料として用いています。タイルの成形用にも入っています。木節、砂婆、センベル、長石はタイルの主要な原料です。

また、砂婆を黄瀬戸釉に混ぜると、いわゆる「あぶらげ手」(あぶらげみたいな表面)と呼ばれる茶道で重用されるガサガサっとした高級感のある黄瀬戸になります。

あるとき、市内の山道で「砂婆とるな!」という看板が立っていましたが、それって砂婆のありかが分かってしまうんでは?もしくはよその街から来た人は、砂掛け婆かと思うのか・・・・、いずれにしても奇妙な看板でした。

志野にしろ黄瀬戸にしろ、背景には良質な原料があったからです。このように産出する土の特性から、土地に根付いた伝統的なやきものが誕生しました。

 粘土分、長石、含鉄鉱物、動植物の有機物質を含んだ土が採れる常滑、信楽、備前、益子は粘土だけで成形ができ、焼くと黄色、赤褐色、黒褐色の焼き締まる土の特長をいかした灰かぶりの焼き締めのやきものです。

また陶石の産出が多い、九州の天草、泉山、兵庫県の出石、四国の砥部は磁器物の産地になっています。 それでは、原料からどのような工程を得てタイルになっていくのでしょうか? IMG_8441a.jpg

写真は地元の丸美陶料さんの原料ストックヤードです。

次回に続きます。  (Muto)

2009年02月10日

ものづくりの良心

製品の安全性を考えれば、工業製品がクリアしなければならないのは、規格です。

タイルの統一規格として、日本にはJISの陶磁器質タイル(JIS A 5209 2008)がありますが、それ以上に厳しく社内規格を設けることで優良な製品はできあがっていきます。

タイルを貼ったのち、割れや剥がれが起こってはたまりません。そこで、強度、吸水率、寸法・形状、ねじれや反りなどに明確な規格があり、工場内で建築物件ごとの製品単位で抜き取り検査を行っています。

寸法と形状と一言でいいますが、土を焼くという不安定な工程を経るやきものの特性を考えると、ミリ単位の均一な精度をあげる機械化と技術の進歩は驚愕的です。 IMG_8265b.jpg

写真は強度を検査しています。タイルの中央に荷重をかけたときの、タイルのスパン1㎝幅1㎝に換算したときの破壊荷重を計ります。

また、吸水率は低ければ低いほど良いのが、外壁や水回りに用いられるタイルの重要な機能です。

寒冷地では含んだ水が凍り、タイルの割れにつながりかねません。JIS規格は3%以下ですが、加納製陶では1%の厳しいものにして製品向上を図っています。

こちらの検査はちょっとおもしろいです。タイルを2時間グツグツと煮沸して、12時間放置し、乾燥したものとの水分含有量を比較してだします。

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これは赤外線水分計

成形前の坏土(=陶土原料)も水分量を赤外線水分計でも計ります。

これは、成形に適した水分量を知るもの。5%を切ると、焼成後にパイ生地のような層ができてしまうのです。

ばち(相対する辺の寸法差)などの寸法はノギスで測ります。

 壁面に貼り付けるときタイル裏面の形状を「裏足」といいますが、剥離防止には重要な部分です。製品の大きさによって異なりますが、例えば45二丁(45㍉×95㍉)裏足の高さも0.7㍉以上と決められています。

形状や厚みに関わるほとんどの寸法は、JIS規格より誤差を厳しくしています。

社内で検査する以外にも、必要に応じて耐摩耗性や釉薬の耐薬品性などの検査は、同町内にある(財)全国タイル検査技術協会へ出しています。

このような安全な製品作りは「ものづくりの良心」だと思います。(Muto)

2009年02月03日

CTタイルって何?

土と釉薬と炎・・・伝統のやきものには素朴なイメージがありますが、とくに、釉薬や窯業原料、薬品の進歩は顕著で、化学的です。

最近話題の環境問題対策に、大気中の汚染を減らす化学の知恵を応用したやきものに注目してみました。

 美濃焼では、「CTタイル」が環境適応機能型の製品です。

 汚れがつきにくい、落ちやすいので手入れが楽。そのうえ、消臭、抗菌の他、タイル表面に接触する大気中のホルムアルデビドや有害物質の分解などに効果があるようです。

いったい、どんな仕組みなんでしょう?

この技術は、「触媒」の性質を利用したもの。触媒とは、それ自体は変化しないけれども、周辺の物質の化学反応を促進させるものだそうです。で、触媒となる物質を塗布、あるいは混入することで、タイルに汚れを分解浄化する機能を持たせたわけです。

現在応用されている「触媒」には、「光触媒」と「電荷触媒」の2つの方法があります。

美濃焼CTタイルは、このうち「電荷触媒」の性質を利用したものです。正確には「電荷移動型酸化還元触媒=Charge Transfer」といいます。(略してCT触媒)

CT触媒は、温度変化があると、周りの物質のなかのプラス電子、マイナス電子が引き合い電子構造を変える性質。 これを利用して・・・・。例えば、車の排ガスなどの窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの塩基性の汚れを酸化作用で、炭化水素や二酸化炭素など酸化の汚れを還元作用で、 という具合にプラスとマイナスの電子が引き合う性質で電子構造をかえ、無害な物質に分解するそうです。

そこで、CT触媒を釉薬に混入して、焼成し、CTタイルに応用したのです。化学反応を促進させるエネルギーは温度変化であるため、光がないところでも利用できる利点があります。 IMG_8250.JPG

CTタイル(下)と一般のタイルに墨汁液を付けてみました。CTタイルの墨汁液ははじけ、汚れが付きにくいのがわかります。

笠原町と開発者の市村昭二理学博士の共同研究で2004年には、発明大賞を受賞しています。(協同組合KSG・美濃焼CTタイル

一方「光触媒」は、酸化チタンを超薄い皮膜として製品に塗布し、700℃位で焼き付けるコーティング方法です。

酸化チタンには、紫外線(光)があたると、活性酸素を発生させ、水になじむ親水性と、表面についた有機物質の分解という2つの作用を促進する作用があり、これを応用したもの。

この技術は、TOTOの「ハイドロテクトコート」として開発された特許技術です。ハイドロテクトはガラスや車などの汚れ防止にも応用されています。

建造物自体が、大気浄化の作用をもてるようになるなら、まさに未来型タイルです。(Muto)

2009年01月28日

釉薬と装飾ーその2

IMG_8162a.jpg タイル工場の敷地内で日に幾度となく見る風景です。 作っているのは外壁タイルなので、外光での色やテクスチャーの具合を試作タイルで見ています。求める色合いやテクスチャーをだすためには、このときの釉薬屋さんとの打ち合わせが重要です。 とくに、補修タイルで破片からの再現は、使っているであろう原料を経験から予測をたてます。どの傾向の基礎釉(釉薬の話その1参照)に、どの顔料をどれくらい、どんな金属を添付したら、元の破片や作りたい理想に近づくか?使う原料の方向性を釉薬屋さんに提案してみます。テストピースの試験を繰り返して、最終的に釉薬を決めます。 とても手間のかかる仕事ですが、経験による見当が早道でしょう。

志野の人間国宝・荒川豊蔵さんは岐阜県・可児の山奥で桃山時代の陶片を発見し、そこから試行錯誤のうえに「志野」を再現しました。やきものに携わる人は長年の経験から、原材料の見当をつけます。先人の残した一つの陶片から、再現する仕事はロマンを感じます。
再現した釉薬にさらに新しい経験が加えられ、革新的に伝統の技術が伝わっていくんですね。

補修用タイルの場合、時を経過した退色まで、現存する周りと合うように再現します。 しかし、こうして決まった釉薬をかければ、思い通りのタイルが量産できるわけではありません。2~3層に掛けるに、どこにどんなふうに釉薬をかければいいのか?
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開発課長がコンプレッサーによる手吹きで釉薬をかけています。真上から釉薬がかかるように姿勢はまっすぐ、少しずつ移動します。量産ラインの機械を想定してるかのようです。分量を計算するため伝わる職人さんの工夫も見られます。
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加納製陶の現在80歳になる会長は現役の職人さんでもあります。永い職人としての経験と技術の工夫は伝わっています。

建物にも時代に沿った流行があります。過去の建物で多いのは、壁面を微妙なグラデーションで変化を持たせる「3色ミックス貼り」。これを再現するにはテスト用に、1色に最低2色の試作を作ったとしても、6種類の釉薬が必要になります。10現場あれば、日に60色のテストです。
微妙な釉薬の差はわずか、0.0□%の微量な添加顔料や金属で変わるので、的確な原料の指示が完成までの早道になります。
また、釉薬の色だけではなく、表面状の凸凹の形態で見た目の発色は変わります。軽石のような表面のショット面状というのがありますが、鉄粉などの斑点が沈み込んでしまうこともあり、加減が難しいものです。

いろいろなケースに対処するのは職人さんの経験あってのことでしょう。こうして理想の色合いになるまで、試験を繰り返し、釉薬の分量を計算し、量産のラインに移すことができるのです。
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機械による生産ラインの釉掛け  



      (Muto)


2009年01月23日

釉薬と装飾の話-その1

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写真のタイルのひとつ一つの釉薬と焼成条件は、皆同じものです。施釉するとき数種の釉薬を2~3層にかけていますが、その濃度と量をかえたものです。次の3つのピースも同じひとつの釉薬で変化をつけたもの。
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こんなに素材感が違ってくるんです。 釉薬の工夫は焼成と同様、やきものの醍醐味です。
オブジェ系の陶芸展に行くと、とても不思議な造形物に出くわします。
例えば、美濃にも国際フェスティバルがあります。 まずは、そのインパクトに、作者は何を表現ているのだろうと思われるかもしれません。
現代美術や彫刻と陶芸の境界ラインはどんどん曖昧になって、交錯しています。しかし、表現に「やきもの」を拠り所とする作者は、素材が陶である必要性と視点がこだわりとなって作品に現れています。
やきものの特性である「土の可能性」、「釉薬の美しさ」、「焼きの変化」のなかで、作者が一番自分の美意識に合点する部分を抽出し、解釈し、ときにはデフォルメして表現しています。素材の特性の限界ぎりぎりのところを可能にするカタチに、「どうやって焼いたんだろう?」と技術に感心します。
翻って、やきもの芸術と産業は切っても切り離せないものだと感じるのです。伝統の技術に、斬新な感覚が加わり、新しい表現技術へと、発展しています。技術と表現の変遷は、陶芸芸術にも、日常で目にする食器にも、家の中の水回りのタイルにも、大きなビルの壁面にも生かされて、同じ共通項があります。
タイル工場のなかで、現場の職人さんと話しているとそのことを感じるのです。

タイルは量産品ですから、一般的に「手作り」のイメージから遠いかもしれません。しかし、商品開発や、建築現場に合わせて作る特注商品、補修の為に過去のタイルを再現するなどの場面では、ほぼ一品生産です。
違いは、量産ラインにかける工夫と、工業製品としての厳しい規格に合わせること、建築基準法を考えなければなりません。大変でしょ~!?
タイルは造形的にはフラットなシンプルなものです。またJIS規格では吸水率や強度が規定であるので、おのずと土の原料も硬質な磁器質に決まってきます。 それゆえ、面状と表面のテクスチャーが表現のすべてになってきます。
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写真は加納製陶の開発課長が試行錯誤して作り上げたタイル面状です。釘でスクラッチしたり、所々に斑点や釉薬のかき分けしたり。その面状は陶彫オブジェの表面のようです。
施釉の工夫は重要です。
釉薬は基本的には三つの性質をもつ成分の原料から成り立っています。
溶かして発色する成分(アルカリ原料)、釉薬の骨格となる成分(酸性原料)、素地に安定的に溶着させる成分(中性原料)です。ちょっとややこしそうですが、すごく乱暴な言い方すると、元は土や石の鉱物と木の灰の化学的性質です。 鉱物や灰の中の化学的成分が火によって化学反応を起こしている・・・なんていうとかっこいい?自然からの原料なので素朴なイメージがやきものにはあるけれど、実は非常に化学的です。

この基本になる釉薬を「基礎釉」といいます。基礎釉に鉄やマンガン、銅、コバルト、クロムなど金属や顔料を微量添加することで、色が変わります。
例えば、美濃の伝統的な釉薬でいえば・・・・。「黄瀬戸」は、長石などの石類と粘土成分と灰からなる基礎釉にわずかな鉄を加え、酸素をふんだんに取り入れる酸化焼成で焼くのです。微量な鉄は黄色に発色します。しかしこれを、酸素を遮断した還元焼成にすると発色は青磁色のようにやや青緑っぽくなります。また、基礎釉を作るときに、性質の異なる鉱物へと種類や量を換えると光沢やマット感、ガサガサな表面と変化させることができます。
そうやっていくと、釉薬には焼成との組み合わせで無限のテクスチャーの広がりがありますが。土と合うのか?釉の剥がれなど「のげる」ことはないか?溶けてダラダラにならないか?あとは職人さんが長年にわたって、得た経験の統計から生まれます。

さて、話をタイル装飾に戻します。 タイルは表面に起伏の形状や斑点などで複雑な模様をつけて装飾とします。 タイルの釉薬には「基礎釉」に顔料を添加することが多いのは、色が安定しやすいからです。
特徴的な基礎釉に通称「ドロ釉」と呼んでるものがあります。エンコーべともいいます。聞き慣れない言葉ですね。どうやら、語源はフランス後で、器の制作でいえば、化粧土のようです。
化粧土は、ボディーの成形に使用した土をドロドロの泥しょうにし、カオリンや顔料を加えたもの。ボディーと共土にするのは密着性を高めるからです。
化粧でボディーを装飾し、模様をつける伝統の技法は、日常の器で目にしますね。日本では「粉引き」,ヨーロッパでは「スリップウエア」です。
良質なエンコーベには成形用の良質な坏土が要ります。 「ドロ釉」は化粧土に媒溶成分の長石を混ぜ、釉薬にしたものです。見た目はマットな少しざらっとした感じながら、長石の働きで素地の吸水率を抑えています。 次回は釉薬と装飾での職人さんの工夫をお伝えします。(Muto)

2009年01月14日

乾式プレス成形

タイル工場のラインの始まりは大きなプレス機です。 IMG_8086a.jpg

1平方㎝あたりに230㎏もの圧力が加わり、タイルの形が始まります。

タイルの成形は、顆粒状の原料を高圧でプレスする乾式成形です。 乾式の最大のメリットは、歪みを防ぐことでしょう。

水を含んだ柔らかい粘土で成形すると、外側と内側の乾燥具合の差でどちらかに引っ張られ、歪みが生じてしまいます。とくに真っ平らなタイルのような形状は、周りが切れたり反ったりしやすく、少しの歪みでも致命的です。

スペインなどヨーロッパでは、水を含んだ粘土で成形する手作りのタイルがあります。こちらはせっき質、いわゆる土物です。

湿気が多く、寒暖の四季のある日本では、カビや凍てて割れることを考慮すると、硬質な磁器質がやはりメインになります。

手作りのやきものはゆっくり乾燥する必要があります。時間がかかる上、乾燥具合によって形にバラつきが出る割合も高くなります。味わいがありますが、量産体制には向きません。 日本のJIS規格は吸水率を3%以下としています。乾式成形は、サイズや形の精度が均一なものです。 IMG_7915a.jpg

石の面状にプレスされたタイルには、まだ四方にバリがあります。それがラインを通っていくとキレイにはぎ取られるさまは、見ていて気持ちが良いほどです。粉状でありながら、機械に吸い上げられて移動するようすは不思議です。

 ラインでは何カ所で検品があります。 IMG_8080a.jpg

「青だけ」もそのひとつです。青色の溶液に成形したものを付けることで、ヒビ切れの有無を検品しています。

その後釉掛けへとラインは進んでいきます。いくつかの検品を経て、窯入れの前に乾燥庫でしっかり乾燥をさせ、いよいよ窯入れになるのです。                  (Muto)

2009年01月07日

循環型リサイクル

やきものの原料は、長石や珪石、蛙目、カオリンなどです。

地球上に気の遠くなるほど長い年月をかけて堆積した、土や石からなる天然資源なんですね。

 土や石なのだから埋蔵量は無限のように錯覚しますが、不純物のない良質なものは限られています。

粘土分のカオリンは、化粧品のパウダーや胃腸薬など医薬品にも使われています。

医薬品?口にするもの?とびっくりですが、不純物のないカオリンはキレイです。

工業原料全体として考えると、採掘量は多いでしょう。

このカオリンも最近では輸入に頼らざるえない現状があります。

良質な土のとれる鉱山がある土地は、窯業産地として大昔から発展してきました。美濃もそうです。

そんなわけで、窯業においても資源の枯渇は無視できない課題です。 IMG_7949.JPG

加納製陶の工場内には、リサイクル容器があちこちにあります。検品で外れたタイル破片と、成形不良の陶土屑を分別して入れています。 IMG_8005.JPG

外にはプールのような大型の容器が設置してあります。

埋めて捨てる最終処分ではなく、再生原料にしているのです。

 地元の釉薬会社がこれを集め循環型リサイクルシステムを構築しています。

 タイル破片は粉砕されてすり潰され、白いセルベンと呼ばれる再生原料になります。セルベンと陶土屑、純粋なバージン原料を調合して成形のための窯業原料に再生するのです。

いくつかの原料を調整して混ぜ合わせるほど、土の欠点を補い合い長所が出て、良くなるのは、「やきもの」の特質です。

 釉掛けして焼成されていても、粘土として使えるのはなぜ? 釉薬屋さんに聞いてみたところ、細か~い粉末状にすり潰すため、影響がないんだそうです。

セルベンは7~8年前に美濃焼業界と岐阜県セラミック研究所が、バージン粘土と混ぜた再生坏土(RCL粘土)を作った運動によって、一般的にも認知されたのがきっかけだったと思います。

RCL粘土のセルベンの含有率は現在20%ですが、技術的には50%まで可能だといわれています。一度焼成した再生土なので、「強い。焼成温度も低くなるので燃料の消費を減らせる」という専門家もいます。

素焼きの陶片を粉砕した物をシャモットといいますが、そういえば、大物制作の時に混ぜると、歪みやワレが少なくなります。それと同じでしょう。セルベンを入れるとろくろも挽きやすくなります。

 タイルの場合はどうでしょう? タイルの成形は粉末の陶土(=坏土)を油圧プレスで成形する乾式成形です。 リサイクル原料の成分表のひとつを見ると、セルベンは5%。焼成前の成形不良品や残土とセルベンを含む窯業廃土全体は57%で、バージン粘土は33%。

技術的にすぐれた原料ができています。 IMG_8058.jpg

 再生坏土で製品化した大石面状のタイル

環境を考え、リサイクルに積極的に取り組んだ製品作りは不可欠です。(Muto)

その他の商品カタログはこちらから

2008年12月25日

リング  窯の話 vol. 2

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トローチ・・・?  いえ、そうではありません。

リングと呼ばれていますが、焼成中の窯内の温度、雰囲気を確認する物です。

焼成後のリングの状態を見て、どんな焼成だったのか見当をつけ、データにしています。

窯は焼き物を入れる場所によって、焼成の雰囲気が異なります。で、窯のなかのいろんな場所にリングをおいて焼成状態の見当を付けるわけです。

器を焼く窯では、ゼーゲルコーンというものがあります。三角錘のような形をしています。

こちらは、窯の穴から覗いて、その倒れ具合で温度帯と雰囲気を知る。

 もちろん温度計センサーがありますが、温度だけでは一概に知ることができない、時間による熱量と窯内の雰囲気があるものです。

窯の癖みたいなものもあります。ここが、できれば、透明の窯があったらと思う所以ですが・・・・。

均一な製品を作り上げるにはデータは重要です。

それをもとに、窯の各場所ごとで個別のバーナーワークを駆使して、雰囲気を変えているのが職人さんの経験です。

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テストピースを貼り付けたものです。並んだタイルの差は、わずかで見ただけではわかりませんが、均一にするための参考にします。わずかな差にもこだわりがあります。

日本のタイルは厳しい規格基準がありますから、少しの色、表情の差に気を配ります。

ヨーロッパのタイルとこの辺が少々違うかもしれません。 日本のものつくりはとても厳密だと思います。                             つづく  (Muto)

2008年12月18日

窯の話 vol.1

窯の話  その1

やきものは、1に焼き、2に土、3に装飾といわれます。

1に焼き・・・・ですから、焼成はすべてを決めてしまうような重要な部分を占めます。

 最後は炎に委ね、手にとって見ながらなんて調整は不可能です。

耐火プラスチックかガラスの窯ができたらと常々思っているほどですが、1250度の高温では、結局赤白い炎が見えるだけでしょうね。

 さて、トンネル窯の話です。

 加納製陶では、全長約60㍍のトンネル窯が毎日稼働しています。

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                                  先が見えないくらい長いです。まるで倉庫か部屋


60㍍のトンネル窯でどれくらいのタイルが焼成できるのか?

ちょっと想像がつかないかもしれません。

1台の台車が出ると、1台が入るという具合で、順に流れていきます。

窯の3分の1あたりまで台車が行くと、焼成が始まり、丸1日かけます。

 やきものの窯といえば、穴窯、登り窯、ガスキルンなどがありますが、もとの仕組みは同じです。

焚き口のバーナーの炎、温められた空気が下から上へ回りながら、煙突へ抜けていく。

ただ、トンネル窯を見るたびに、効率の良い近代的な姿に感心します。

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こちらは一般的な陶芸用のガス窯の後ろのダンパーとドラフト。

これを抜いたり、引いたりの操作で窯の中の雰囲気を変えます。

 

窯の中は場所によって焼きの雰囲気が微妙に異なります。

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   トンネル窯のダンパーとドラフトはデカイ上に横並びでいくつもある。

 

一般的なやきものは、炎に委ねる窯変や釉薬の変化が味ですが、

タイルの場合少し事情が違います。

広い壁面に部分的な差が生じるのは、好まれません。

 窯はコンピューターによって制御しているとはいえ、微妙な感所は、やはり人の力、職人さんの経験とそのデータです。

上の写真のダンパーやドラフトに限らず、所々にある個別バーナーやら空気やらを駆使して、色、調子、雰囲気を変えています。

加納製陶はリフォーム用に、

タイル破片から新しくタイルを再現する仕事をしていますが( 補修タイル研究所 詳しくはこちら)、

これも今までの経験とデータあってのことです。

                               つづく    (Muto)

2008年12月17日

やきもの物語

やきもの物語

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これは、サヤです。

ビルの模型のようにも見えますが、

集積の美と言いましょうか、同じ物が理路整然と並んでる姿は美しいですね。 IMG_7875.JPG

こちらは、役物といって、壁面などのコーナー用のタイルのサヤです。

「美濃焼」といえば、それはせんべいか?と言われたのはちょっと前の笑い話。

ようやく馴染んできたでしょうか?

「やきもの」は、地名がつくのが一般的で、原料の土のとれる地名からきているようです。

で、「何焼き」ですかとよく聞かれます。

さて、そうするとタイルですが、これも「美濃焼」です。

新しく「ブログ」のコーナーに「やきもの物語」を新設しました。

陶芸に興味のある一般の方、また建設関係など専門の方に読んで頂ければ幸いです。

宜しくお願いします!     (Muto)

                                       

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