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ものづくりの良心

製品の安全性を考えれば、工業製品がクリアしなければならないのは、規格です。

タイルの統一規格として、日本にはJISの陶磁器質タイル(JIS A 5209 2008)がありますが、それ以上に厳しく社内規格を設けることで優良な製品はできあがっていきます。

タイルを貼ったのち、割れや剥がれが起こってはたまりません。そこで、強度、吸水率、寸法・形状、ねじれや反りなどに明確な規格があり、工場内で建築物件ごとの製品単位で抜き取り検査を行っています。

寸法と形状と一言でいいますが、土を焼くという不安定な工程を経るやきものの特性を考えると、ミリ単位の均一な精度をあげる機械化と技術の進歩は驚愕的です。
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写真は強度を検査しています。タイルの中央に荷重をかけたときの、タイルのスパン1㎝幅1㎝に換算したときの破壊荷重を計ります。

また、吸水率は低ければ低いほど良いのが、外壁や水回りに用いられるタイルの重要な機能です。

寒冷地では含んだ水が凍り、タイルの割れにつながりかねません。JIS規格は3%以下ですが、加納では1%の厳しいものにして製品向上を図っています。

こちらの検査はちょっとおもしろいです。タイルを2時間グツグツと煮沸して、12時間放置し、乾燥したものとの水分含有量を比較してだします。

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これは赤外線水分計

成形前の坏土(=陶土原料)も水分量を赤外線水分計でも計ります。

これは、成形に適した水分量を知るもの。5%を切ると、焼成後にパイ生地のような層ができてしまうのです。

ばち(相対する辺の寸法差)などの寸法はノギスで測ります。

 壁面に貼り付けるときタイル裏面の形状を「裏足」といいますが、剥離防止には重要な部分です。製品の大きさによって異なりますが、例えば45二丁(45㍉×95㍉)裏足の高さも0.7㍉以上と決められています。

形状や厚みに関わるほとんどの寸法は、JIS規格より誤差を厳しくしています。

社内で検査する以外にも、必要に応じて耐摩耗性や釉薬の耐薬品性などの検査は、同町内にある(財)全国タイル検査技術協会へ出しています。

このような安全な製品作りは「ものづくりの良心」だと思います。(Muto)

なぜ、正確に再現できる?

補修タイルで「なぜ、早くできるの?」と同様に、お客様から頂戴する言葉で多いのが、「なぜ、正確に再現できる?」というものです。

弊社は釉薬をかける「施釉タイルのメーカー」ですので、再現するにあたって、施釉による方法をとっています。 お客様から届いたタイル破片を見て、使われている釉薬を的確に想定し、調合や施釉方法を微量に変えて、繰り返し見本焼きテストをします。

建設現場に合わせ特注品を多く作ってきた45年のノウハウが、正確性の土台になっていますが、焼成による変化も想定して、納得がいくまで徹底した見本焼きを繰り返しています。

お客様に最初のOKを貰ってからも、さらにいくつかのパターンもつくってみます。

職人さんは頑固な拘りをもって、妥協を許しません。誰が見ても元の破片と差がわからなくなるまで、発色やテクスチャーを求めます。

ノウハウに裏付けられたテストの繰り返しと頑固な拘りが、正確な再現につながっていると思います。(Muto)

CTタイルって何?

土と釉薬と炎・・・伝統のやきものには素朴なイメージがありますが、とくに、釉薬や窯業原料、薬品の進歩は顕著で、化学的です。

最近話題の環境問題対策に、大気中の汚染を減らす化学の知恵を応用したやきものに注目してみました。

 美濃焼では、「CTタイル」が環境適応機能型の製品です。

 汚れがつきにくい、落ちやすいので手入れが楽。そのうえ、消臭、抗菌の他、タイル表面に接触する大気中のホルムアルデビドや有害物質の分解などに効果があるようです。

いったい、どんな仕組みなんでしょう?

この技術は、「触媒」の性質を利用したもの。触媒とは、それ自体は変化しないけれども、周辺の物質の化学反応を促進させるものだそうです。で、触媒となる物質を塗布、あるいは混入することで、タイルに汚れを分解浄化する機能を持たせたわけです。

現在応用されている「触媒」には、「光触媒」と「電荷触媒」の2つの方法があります。

美濃焼CTタイルは、このうち「電荷触媒」の性質を利用したものです。正確には「電荷移動型酸化還元触媒=Charge Transfer」といいます。(略してCT触媒)

CT触媒は、温度変化があると、周りの物質のなかのプラス電子、マイナス電子が引き合い電子構造を変える性質。
これを利用して・・・・。例えば、車の排ガスなどの窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの塩基性の汚れを酸化作用で、炭化水素や二酸化炭素など酸化の汚れを還元作用で、 という具合にプラスとマイナスの電子が引き合う性質で電子構造をかえ、無害な物質に分解するそうです。

そこで、CT触媒を釉薬に混入して、焼成し、CTタイルに応用したのです。化学反応を促進させるエネルギーは温度変化であるため、光がないところでも利用できる利点があります。
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CTタイル(下)と一般のタイルに墨汁液を付けてみました。CTタイルの墨汁液ははじけ、汚れが付きにくいのがわかります。

笠原町と開発者の市村昭二理学博士の共同研究で2004年には、発明大賞を受賞しています。(協同組合KSG・美濃焼CTタイル

一方「光触媒」は、酸化チタンを超薄い皮膜として製品に塗布し、700℃位で焼き付けるコーティング方法です。

酸化チタンには、紫外線(光)があたると、活性酸素を発生させ、水になじむ親水性と、表面についた有機物質の分解という2つの作用を促進する作用があり、これを応用したもの。

この技術は、TOTOの「ハイドロテクトコート」として開発された特許技術です。ハイドロテクトはガラスや車などの汚れ防止にも応用されています。

建造物自体が、大気浄化の作用をもてるようになるなら、まさに未来型タイルです。(Muto)