やきもの物語

鋳込み成形

やきものの成形のひとつに、鋳込みがあります。
石膏型の吸水性を利用して、土をドロ状にした泥しょうを、型に流し込んで形作る技法です。
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原型を2つ割った石膏型です。
複雑な造形になってくると、割型のパーツも増えます。

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流し込む泥しょうには、珪酸ナトリウムや、炭酸ナトリウムなど解こう剤を入れ、少ない水分で、とろみのある流しやすい泥しょうをつくります。

型いっぱいに流し込んだ泥しょうが適度な厚さになったとき、型から排出。
一定時間おいて型からはずすことで、厚みの均一な一定なものを大量に作ることができます。
薄手のもの、多角形な形、彫塑的な複雑な成形にむいています。
日常的に使われる食器、置物などに、この技法で作られたものが多く見られます。
タイルの成形のほとんどが、顆粒状原料を加圧プレスで作る乾式プレス成形なのは、焼成後の寸法や形の歪みなど、焼成リスク少なくするためですが。
とはいっても、近年は建築家の自由な発想で、タイルにも様々な面状や形が要求されます。
そこで、タイルにおいても、デザイン的な形状は鋳込みで成形する場合があります。
タイルは、建造物に集積して貼り合わせたときに、わずか0.X㎜単位の寸法や形状の差が、最終的に大きなズレになりかねません。
従って、焼成による歪みや反りなどをあらかじめ計算に入れた精密な型を作る必要があります。
分業化されている美濃、瀬戸では原型師、型屋さん、鋳込み屋さんがいて、専業の職人技が、ものつくりを支えています。
(ちなみに、メーカーを昔は「窯焼き」と呼んだのは、焼成の専門だった名残でしょう。)
また、鋳込みには、流し込む方法で、圧力鋳込みとガバ鋳込みがあります。
ガバ鋳込みは、泥しょうを入れて「ガバっと排泥」するのが語源です。
圧力鋳込みは、空気圧力で泥しょうを型に送り込み注入する方法で、さらに均一な厚みで大量に生産できる仕組みです。
このような大量生産のための鋳込みの伝統的な技術ですが、1品だけのオブジェ製作に鋳込みの技術を使って創作の可能性を広げている陶芸家に、京都の深見陶治さん、瀬戸の長井重和さん、土岐出身の林茂樹さんがいます。
鋳込みは造形的にも、可能性の広がる技術です。(Muto)

窯の話―vol.3 窯の種類と焼きの違い

三度、窯の話です。今回は種類から見る焼成の話です。

ガス窯、トンネル窯、電気窯・・・、窯の違いは製品にどんな影響があるのでしょうか?

美濃のタイル工場の窯は、ほとんどがブタンガス燃料のトンネル窯です。
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   60㍍もある長いトンネル窯(加納工場)

 大量生産での焼成の均一化、燃料の効率化において、現在で最も近代的な窯です。

窯は時代とともに燃料、形状を変え、近代化の変遷が製品技術を発達させてきました。

窯の歴史は、雑木と一緒に焼いた土偶に始まり、世界で最も古い窯は、紀元前6世紀頃のエジプトの円筒状ストーブ形といわれています。

その後、地中に穴を掘って築く窖(あな)窯時代に入るのですが、地下の水分によって温度が上がらないことから、地上に穴を築くようになります。さらに、高温焼成しようと、燃焼室と焼成室を区別し、燃焼効率を上げるため通風をよくしようと、傾斜面に窯を築く、煙突をつけるなど、形を変え燃料を変えてきたのです。

窯の種類は燃料から見れば、薪窯、ガス窯(LPガス、ブタン)、 灯油窯、 重油窯、電気窯に分類され、形状からすれば、窖(あな)窯 、大窯、連房式登り窯、倒炎式角窯、蛇窯、 トンネル窯などになります。また他にも、上絵用に錦窯、楽焼きの楽窯などがあります。

最も、最新式の窯は、マイクロ波によるもので、電子レンジと同じ仕組みです。 こちらはまだ容量が小さく大型化には開発がまたれます。

近代化は、新しいものに変わっていくなかで、古いやり方が淘汰されていくものですが、しかし、やきものにおいては、大昔に誕生した形状や燃料も、場合によっては今も使われています。

作りたい製品、表現したい作品によって相応しい「焼成の雰囲気」を求めるためです。

例えば、効率が良いからといって、ガスではなかなか、薪の灰かぶりそのものはだせません。また、彩色が鮮やかな低火度のスペイン陶器などは、円錐状の全体が煙突みたいな形状で、高温域での温度上昇効率を求めていません。

焼きにはそれぞれのこだわりがあるわけです。

1250℃の高温帯までいけば、それで終了というものでもありません。

素地の水分が蒸発する「あぶり」の段階。温度による化学反応で、粘土鉱物が新しい鉱物に生成、溶融して、固く焼結していく「攻め」「練らし」の段階。1100℃からは釉薬の変化もはじまります。時間ごとに緩やかに曲線を描いて温度をあげ、微妙な操作で焼成雰囲気を作り出しています。

冷却の方法と時間でも、色も強度もずいぶん変わります。まるで、おばあちゃんの煮物と一緒で、冷めていくときがおいしい秘訣?なので、すぐに窯の蓋を開けるわけにはいきません。

 このように、昇温速度(かける時間)と温度帯、条件、冷却温度と方法が表現に多彩な変化を生むので、焼きにあった窯を選択することになります。

多種の窯を持てればいうことないですが、そんなわけにもいきません。

では、大量生産において、効率と品質をあげるのに良いトンネル窯と電気窯の特質を特に取り上げてみます。

 20世紀初頭に完成したトンネル窯は、なかでも、製品の均一化と燃料の効率化の優れたものです。長いトンネルの中を製品が台車に乗って流れていくことで、あぶり、攻め、練らし、冷却と焼成されるのですが、窯入口から予熱帯、焼成帯、冷却帯で構成されています。

炎は焼成帯にあたるトンネル窯の中央のバーナーのみです。
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 出口から入り口方向に空気を送りだして得た排熱を、予熱帯焼成温度に利用しています。

また焼成帯のバーナー付近に炎に空気を送る弁やダンパー、ドラフト等によって窯内の焼成圧力の雰囲気を変えたり微調整ができます。 

 
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職人さんの腕の見せ所のバーナーワーク

一度で大量、均一な焼き上がりが可能ですし、微調整による炎の焼きは、やはり焼きものらしいあがりです。

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トンネル窯の出口部分から中央の炎が遠くに見える

一方電気は、炎ではなく窯内に張り巡らした電熱線で温度をあげています。温度曲線はコンピューターによる、電気制御が可能です。電熱のため、焼成が安定します。が、それも窯の容量によるので、トンネル窯ほどの大量生産は望めません。

特質としては、ガスは炎をくぐった焼きの味わいがあるし、電気はさらっとした焼きの特長があります。 工場にはトンネル窯の他に、電気窯があります。
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電気窯の容量としては、均一的に焼きが仕上がるには最適な大きさのMAXといわれる1.3立方メートルの窯です。大容量のトンネル窯より小回りがきくため、小ロットの製品を早くつくるのに有用です。一度に200才、17.5平方㍍分のタイルまで焼成できます。

焼成の均一化は、同じときに同じ窯で一度に焼くのがベストなので、これ以上の量の焼成は窯を分けて電気窯で焼成するより、トンネル窯にまわした方が製品が安定します。

製品にあわせて、窯は選択できる体制は理想的で、これにより小回りが効くうえに、高品質な、どんな注文にも対応できるようになります。        (Muto)

土の話 その2

一般的に採掘した土は、不純物をとり除いて、水簸し精製して練ります。

では、タイル工場など量産向けの土はどのような工程で、タイル工場に来るのでしょうか?

タイル用原料をつくる地元の丸美陶料さんを見学させて頂きました。

一区画400㌧の原料土が入るストックヤードがずらりと並んでいます。白土、赤土などおよそ100種類ほどの原土があります。

ほとんどがこの地方のものですが、新しい優良な資源を求めて、遠くは信楽と東京都新島産もあります。ちょうど、ストックヤードにトラックから原料が降ろされていました。
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降ろされていたのは、工場から出た陶器屑を回収し粉砕したリサイクル原料でした。窯業資源にする原土は日本全国であと50年分ほどと言われており、資源の枯渇の改善にこのようなリサイクル原料も原土と同じように並んでいます。
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    9㌧の原料が入るボールミル

原土やリサイクル原料は、数種類を混ぜ合わせて調合し、セラミックボール、玉石と一緒にボールミルに投入、およそ18時間回されます。
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ちなみに玉石はフランスの天然石でした。

釉薬調合の場合はセラミックボールだけですが、原土には大きな玉石が相応しいようです。

 

これだけでずいぶん滑らかな粒子ですが、さらにスラリータンクに移されドロドロの泥しょう状まで攪拌されます。

 

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タンクは2階建ての屋根から覗くような深さ。上から見下ろすと足がすくむ思いです。

泥しょう状になった原料は、乾燥をかけて顆粒状になります。

乾燥はスプレードライヤーと呼ばれる高さ25㍍ほどの塔の中です。タイルの街の象徴的な建物です。宮崎駿の「ハウルの動く城」を連想しませんか?
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  この中で泥しょうは噴出され、400~500℃の熱風を吹き付けて乾燥。舞い降りてくる間に顆粒状になります。

顆粒にするには、これくらいの高さが必要なんだとか。

ところで、なぜ粉末ではなく顆粒状なんでしょう?プレスによる乾式成形は湿式より歪みや縮みが少ないと以前のブログでも載せましたが、微粒体のままだと粒子どうしの摩擦に影響されて成形に欠陥がでるからです。
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 乾燥してできあがったタイル原料の出口

このようにしてできあがった顆粒状の原料がタイル工場に運ばれてくるのです。

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     加納工場内原料タンク

                     (Muto)